ばんぶろ。 --やや本格的楽曲考察ブログ

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ごっちゃBOX!!■ASIAN KUNG-FU GENERATION『センスレス』・・・超情報化社会の孤独

#002 ASIAN KUNG-FU GENERATION『センスレス』
---超情報化社会の孤独

 アジアン・カンフー・ジェネレーションのアルバム『ファンクラブ』に収録されている楽曲には、しばしば現代の、情報化社会の闇の部分をえぐるような箇所が登場する。例えば「ワールドアパート」で<即席の歌で舞い踊る/実態のない未来と愛の輪(a)>と、"情報"に踊らされるメディア弱者たちに触れていたり、「ブラックアウト」で<321 情報が錯綜 真実を知らない (中略) 想像と妄想の混同 掃いて捨てるモノ(b)>と、ネット上を駆け巡るウソやデッチ上げ、情報操作の批判とも思わせる痛烈な歌詞の箇所があったり、「桜草」で、社会から逃避し引き篭もる人間の様子を描写していたり・・・するわけだが、そうした、加速する情報化社会への痛烈なメッセージは、9曲目の「センスレス」で頂点に達する。

 <液晶を世界の上辺が這う
  音速のスピードで文字に酔う
  醒めて冷えきって
  忘れ去るだけ>

 「液晶」は、テレビでも、パソコンでも当てはまる。日に日に勢いを増す莫大な情報が私たちの前に無差別に投げ出され、瞬く間に消費されていく。「真実」なのか、「ヤラセ」なのか、「妄想」なのか、「誇張」なのか・・・、判別することも出来ないまま、情報は私たちを圧倒していく。信じ込ませられる。カラフルに彩られたニュースや報道は現実を絶望させ、感情を冷却させる。ふてくされて逃げ込んだ先のウェブ掲示板では、真実とも妄想ともつかない過激な情報が随時流され、私たちを扇動しようとする。インターネットは次第に私たちの心を飲み込み、服従させる。現実に、いま、それが起こっている。

 だがしかし、その全てのものに<温度感も何もない>。冷え切った"情報"でしかなく、生身の人間がそこには居ない。センスレス【Senseless】は「(芸術などの)センスが無い」という意味ではない。感覚の無い、無分別で無秩序なことを指す言葉だ。文字データだけでその実を伴わない空虚な存在が大衆を扇動し、対立させ、さらに人々の感情を冷やしていく。現実はますます色味を失い、秩序を破壊する。理路整然とした高層ビルが街を覆いつくし、人々は機械的に行動し、ノルマと時間に追いやられ、ノイズと極彩色に溢れかえった道路を移動していく。

 <行き交う人込みに解ける
  そんな毎日 今日も明日も>

 そんな時代に、果たして"音楽"は意味をなすのだろうか?

 繁華街を歩けば、CMでも幾らでも流れている流行のポップスがどこからともなく響き渡り、簡単に大量生産された音楽に人々は飛びついていく。音楽以外に価値を見出されたシングルCDがオリコン・チャートの王者となり、「みんな聴いてるから・・・」と携帯からダウンロードした音楽も、カラオケで腐るほど安く食い潰されていく。ウェブ上でいくらでも複製できるようになった音楽データがネット上に氾濫し、力を手に入れたファンたちは、気に入らないミュージシャンたちを潰そうとあの手この手で手薬煉を引く。そこに音楽は無い。人間と人間の間で増幅された憎悪と他虐心が、それを突き動かしていく。

 そんな時代に、果たして"音楽"は力を持つのだろうか?
 人々を救い出すことが出来るのだろうか?
 この楽曲の中でも、その答えは描かれない。知ることが出来るはずもない。

 だから、"祈る"のである。

 この曲は祈りの音楽だ。ドロドロしたこの現代社会を、「センスレス」では4分間にわたり圧倒的な演奏と象徴的な歌詞で表現している。ところが――、終盤に入ると、この曲は奇妙な展開を見せる。散々自分でこの現代社会を皮肉っておきながら、あまりにもそこからは脈略が無い歌詞が現れるのだ。

 <それでも想いを繋げてよ>


 解放。


 "突き抜けた"後の、5行ほどある短い歌詞群が実に素晴らしい。後藤の、アジカンの、そして世界中のミュージシャンの"祈り"が、そこから読み取れないだろうか?あまりにもストレートな、しかし切実な、今にも泣き出しそうな、純粋な5行。この時代に音楽は不要なのかもしれない。もはや意味を成さないのかもしれない。人々が"人間"を見失うとき、すべての音楽は人類に捨てられてしまうかもしれない。後藤はそれを察知しているのだ。その上で、「俺らはどんなに世界が変わっても、価値が捨てられても、人が人を信じられなくなっても、<世界中を悲しみが覆って>も、いつまでも変わらずに歌い続けてみせるから、どうか、俺たちのこと、忘れないで居てくれ」・・・と、嘆願しているのである。祈っているのである。あなたは、この、ミュージシャンからの祈りに応えることが出来るだろうか?この5行だけを抜き出してしまえば、それほど価値は考えられない歌詞かもしれない。だがそれまでの間に、例えばこの曲の中だけでも十分に"現実の闇"をリアルに描いてきているのだ。散々現実を肯定しながらも、なお、「見捨てないで」と願っているのだ。

 ・・・あまりにも、重く、儚い。この曲ではもはや、メディアもマスコミも、インターネットをも批判することを諦めている。音楽も、彼らの力には敵わないのだ。それすらも認めたうえで、・・・この曲を書いているのだ。

 全体的に難解な内容かもしれないが、曲の最後の最後には理論も知性も吹き飛ばして、ただただひたすらに切実な感情が描かれている。前半と後半のこのギャップがまた、聴く者の胸をさらに締め付ける。『ファンクラブ』の中でも中核をなしている楽曲であるし、同時にひとつの傑出した世界をも築き上げている、見事な楽曲だ。この曲が2006年のツアーで1曲目に披露されたと聞いたが、実に相応しいと思う。アジカンの中でも、一番真摯にリスナーへメッセージを発している楽曲だ。


歌詞引用一覧(歌詞の扱いについて)
(a)「ワールドアパート」 作詞作曲・後藤正文
(b)「ブラックアウト」 作詞作曲・後藤正文
(c)「桜草」 作詞作曲・後藤正文
その他の<>内はすべて、「センスレス」 作詞作曲・後藤正文

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生きておりますー。

次回更新ですが、ウラニーノ分に関しては既に書き上がっているものの、
BUMPのほうで少々苦戦しております。
数日以内に更新できたらと思っておりますので、
まったりとお待ちいただけたら幸いです。
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テーマ:ASIAN KUNG-FU GENERATION - ジャンル:音楽

  1. 2007/08/14(火) 10:01:43|
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